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京アニ事件 | 青葉容疑者「犠牲者数は2人くらいと思ってた」 | 治療した医師「君も罪に向き合って」

青葉容疑者「犠牲者数は2人くらいと思ってた」

京都市伏見区のアニメ製作会社「京都アニメーション」(京アニ)第1スタジオが放火され、社員36人が死亡、33人が重軽傷を負った事件で、殺人などの疑いで京都府警捜査本部(伏見署)に27日に逮捕された青葉真司容疑者(42)が「(犠牲者は)2人ぐらいと思っていた。36人も死ぬと思わなかった」と供述していることが分かった。

捜査関係者によると、捜査本部は逮捕時点で初めて犠牲者数を青葉容疑者に伝えたという。青葉容疑者は事件で自らも重度の全身やけどを負って救急搬送されており、犠牲者数を認識できていなかったとみられる。

反省の弁や犠牲者、遺族への謝罪の言葉はなかった。

一方で、逮捕後の調べに容疑を認めた上で、「ガソリンを使えば多くの人を殺害できると思った」と大量殺人を狙ったこともほのめかしているという。反省の弁や犠牲者、遺族への謝罪の言葉はなかった。

「自分が応募した小説が盗用された。京アニが許せず、恨みが募っていた」

また青葉容疑者が複数の京アニ作品を挙げて「自分が応募した小説が盗用された。京アニが許せず、恨みが募っていた」という趣旨の供述をしていることも、捜査関係者への取材で分かった。過去に青葉容疑者とみられる人物が京アニに小説作品を応募していたが、形式審査の一次選考で落選。京アニ側は、同社の作品との類似点はないと否定している。

捜査本部によると青葉容疑者は一時命の危険もあったが、容体が一定程度回復。入院先など複数の医師の意見をもとに「医療環境の整った施設なら勾留が可能」と判断したという。

社員70人のうち36人を殺害、33人に重軽傷を負わせた

捜査本部は青葉容疑者を逮捕後、ただちに送検。京都地検は10日間の勾留を請求し、認められた。青葉容疑者は同日夕、医療スタッフが常駐する大阪拘置所(大阪市都島区)に収容され、今後、治療を継続しながら府警などの取り調べを受けるという。

逮捕容疑は昨年7月18日午前10時半ごろ、京アニ第1スタジオに侵入し、ガソリンをまいてライターで火を付け、鉄筋コンクリート3階建て延べ約690平方メートルを全焼させた上、屋内にいた社員70人のうち36人を殺害、33人に重軽傷を負わせた疑い。残る1人にけがはなかった。負傷者のうち1人は現在も入院しているという。

治療した医師「君も罪に向き合って」

「青葉容疑者の治療に力を尽くしたのは、被害者と真相解明のためだ。罪に向き合ってほしい」。

熱傷患者の専門治療ができる同病院に、容疑者がヘリで搬送されてきたのは事件2日後の昨年7月20日。

やけどは全身の9割超に及び、最初に搬送された京都市内の病院では手に負えなかった。当時の症状から計算した死亡率は「95%超」。医師は「救命は難しいかもしれない」と感じた。

実施したのは「自家培養皮膚移植」

実施したのは「自家培養皮膚移植」と呼ばれる治療法だった。焼けずに残った部分の皮膚の細胞を培養で増やしてシート状にし、やけどした部分に移植する。培養に3~4週間かかるため、この間の全身管理が難しい。皮膚の機能がなくなると体内の水分が失われるほか、感染症にかかりやすく、死亡リスクもある。

青葉容疑者は、事件時に身に着けていたかばんのひもの下や、足の付け根などに、わずかに正常な皮膚が残っていた。数センチ角の皮膚を切り取り、専門の業者に頼んで細胞を培養。その間、やけどの激しい部分の皮膚を取り除いては、動物のコラーゲンでできた「人工真皮」を貼り付ける手術を繰り返した。

8月中旬に1回目の培養皮膚移植を実施。体の表面の20%程度が覆われると、血圧など全身状態が徐々に改善した。3回目の移植で救命のめどが立ち、移植は9月中旬、5回目で終わった。10月上旬には呼吸管理のための管を抜き、会話もできるようになった。

奇行が目立ち、住民とトラブルにもなっていた。

青葉容疑者は現在のさいたま市で生まれ、定時制高校を卒業後はアルバイトを転々とした。21歳の頃に父親が職を失って自殺後、窃盗事件やコンビニ強盗事件を起こしていた。  服役中は刑務官に繰り返し暴言を吐いたり、騒いだりし、精神疾患と診断された。出所後は、生活保護を受給しながら、さいたま市のアパートで暮らしていたが、音楽を大音量で流すなどの奇行が目立ち、住民とトラブルにもなっていた。

「他人の私を、全力で治そうとする人がいるとは思わなかった」

青葉容疑者は近大病院でのリハビリ中、「意味がない」「どうせ死刑だから」「(自分は)意味のない命」などと投げやりな態度を見せた。食べ物の好き嫌いも激しく、病院食を拒むことも多かった。

しかし、この医師が「私たちは懸命に治療した。君も罪に向き合いなさい」と繰り返し諭し、リハビリをさせると、次第に態度の変化も見られた。  昨年11月の転院時、青葉容疑者は医師に「他人の私を、全力で治そうとする人がいるとは思わなかった」と漏らしたという。