元ジャンプ編集長 「同じ漫画を10年も20年もやっちゃダメ。」
2019年8月27日にDiscordで配信されたラジオ「居酒屋:でんふぁみにこげーまー」では、ホスト役にTAITAI編集長と鳥嶋和彦氏、鵜之澤伸氏、そしてゲストにサイバーコネクトツーの松山洋氏と、集英社の矢作康介氏を迎えて、「漫画はこの先どうしていくべきか?」というテーマについて、大いに語り合ってもらった。
同じ漫画を10年も20年も連載して、それで完結しないお話って何なの!?
松山氏:ちょっと1つお伺いしたいですけど。『ベルセルク』【※】、ついにキャスカが目覚めましたね。※『ベルセルク』……三浦建太郎氏により1989年から執筆されているダーク・ファンタジーコミック。主人公ガッツの親友グリフィスが魔に落ちた「蝕」の際に、女剣士キャスカは凌辱されて正気を失っていたが、2018年に刊行された第40巻で、ついに意識を取り戻した。
鳥嶋氏:あんまり関心がない。
松山氏:ええッ!? 22年ぶりですよ、キャスカ。
鳥嶋氏:三浦さん本人にも言ったけど、「蝕」以降の『ベルセルク』って、話の展開があんまり好きじゃないんだ。正直言って、読者として興味がないから、読んでない。ごめん(笑)。
松山氏:白泉社の方ですよね?
鳥嶋氏:オレはもう会長で、現場に直接の責任はないから(笑)。
でもね……旬の時に描き切っていなくて、話の流れの中で今ここに来て描くというのは、ファンにとっては良いかもしれないけど、ほとんどの人にとっては「だから?」って感じがあると思う。身も蓋もない言い方だけど、同じ漫画を10年も20年もやっちゃダメ。
なぜかというと、週刊誌って年間50冊でしょ。50話だよね。ということは、10年間やったら500話だ。それで完結しない話って何なの?
『ドラゴンボール』を魔人ブウ編の前に終了できなかったのは、今もって悔いている
松山氏:だけど私の感覚だと、『ドラゴンボール』の連載は延べ11年、少年編から最後の魔人ブウの戦いまでで、10年ちょっとなんですけども。『ドラゴンボール』がそれだけ長く続いたことが、その後の『ジャンプ』の漫画が長くなったきっかけになっている気がするんですよ。
それ以降だと、『ONE PIECE』も『NARUTO-ナルト-』も10年以上やってるし、『銀魂』も『BLEACH』もやってるじゃないですか。そういう長寿連載って、今は『ONE PIECE』以外はだいたい終わりましたけど。
鳥嶋氏:それはね、オレはもう卒業生だから言っちゃうけど、『ドラゴンボール』は止めたかったのに止めさせてもらえなかったんだよ。はっきり言うと、僕の前の編集長とその前の編集長の判断だよね。あの時、僕が『Vジャンプ』にいて、鳥山君を助けてあげられなかったのは、今もって悔いている。魔人ブウ編はやるべきじゃなかったよね。
どういうことかと言うと、前の編集長と前の前の編集長は、雑誌の部数しか見ていない。誰が描いていて、誰が支持しているかを見ていない。お金を払ってるのは読者。描いているのは作家。会社のためじゃないんだよね、オレたちがやってるのは。読者のためなんだ。それを忘れちゃうと、ああいうことになる。
それで『ジャンプ』の部数は、『ドラゴンボール』が終わってどんどん落ちた。結果、僕はそのために『Vジャンプ』から『少年ジャンプ』に戻された。
矢作氏:怒ってましたね、当時(笑)。「ふざけんな」って。その下につく人たちの気持ち、分かります?(笑)
鳥嶋氏:ハハハ(笑)。さっき矢作が言った、新人の新連載で表紙にするっていうのは、じつは僕が戻ってからなの。
矢作氏:そうでしたっけ。そうなんだ。
鳥嶋氏:それはどうしてかというと、やっぱり戻った時に「『ジャンプ』って何だろう?」って、もう一回問い直さざるを得ないわけ。ガタガタになっているわけだから。部数は一見すると、まだ600万部弱ぐらいあるんだけど、この先もう落ちていくのは見えてるし。
長期連載漫画の一例
ドラゴンボール 1984年-1995年
ワンピース 1997年-
ハンターハンター 1998年-
ナルト 1999年-2014年
BLEACH 2001年-2016年
名探偵コナン 1994年-
はじめの一歩 1989年-
1年以上連載しているジャンプ漫画
1997年34号 ONE PIECE
1998年14号 HUNTER×HUNTER(不定期)
2012年12号 ハイキュー!!
2014年32号 僕のヒーローアカデミア
2015年12号 ブラッククローバー
2016年10号 ゆらぎ荘の幽奈さん
2016年11号 鬼滅の刃
2016年35号 約束のネバーランド
2017年10号 ぼくたちは勉強ができない
2017年14号 Dr.STONE
2018年08号 アクタージュ act-age
2018年14号 呪術廻戦